2019/12/10 肖敏捷の中国メモ:下り坂に差し掛かる中国経済
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- カテゴリー: CHINA REPORT
今朝、テレビ東京の「モーニングサテライト」に出演し、2020年の中国経済を展望した。中国景気の減速が懸念されているが、この減速は恐らく長期化する可能性が高いと指摘した。ただし、民間経済の活力を取り戻す政策対応が適切であれば、成長率が低下しても、内需を柱とする経済成長の足腰がむしろ強化されていくのではないかと期待できる。
番組で述べた主なコメントは下記の通りだ。
12月6日、中国共産党政治局会議が開催された。年末に開催される前のこの会議では、反腐敗など様々なテーマが取り上げられるが、経済に関する議論がもっとも注目されている。なぜかというと、政治局会議で決定された方向性や目標に従い、12月中の中央経済工作会議、来年3月の全人代などでは、財政政策、金融政策、戦略、計画など、その目標の実現に向けて具体化あるいは肉付けしていくのは、中国の政策決定の流れなのだ。
2020年は第13次五か年計画(2016~2020)の最後の一年ということもあって、今回の政治局会議では、第13次五か年計画で掲げられた主要目標の達成が強く求められている。例えば、所得倍増計画とか、貧困撲滅を目的とする「小康社会」の実現、環境汚染対策などの数値目標がいわゆる習近平政権の公約であるため、その目標の達成は政府の威信にかかっているわけだ。
しかし、注目すべきなのは、政治局が重ねて「安定維持」を強調していることだ。この言い方自体は決して新味がないが、今回は、その重みが一段と増しているといえる。「内外のリスクやチャレンジが明らかに増大している」と判断した政治局にとっては、社会や経済の安定維持に従来以上に腐心せざるを得ないのが実状であろう。
経済について、インフラ整備など景気刺激策の効果もあって、2019年の実質GDP成長率は恐らく6.0~6.5%という政府の政策目標圏に着地するだろう。しかし、2020年について、成長率目標が6%に引き下げられるのではないかとの観測が広がる一方、中長期的には、中国の経済成長率が4%~5%へと、減速の長期化を懸念する声も高まっている。
その背景には、二つの要因があると考えられます。一つは、米中貿易摩擦を契機に、中国の経済成長を支える外部環境が激変したことだ。12月15日の追加関税の発動が回避されるかどうかは、市場関係者が一喜一憂しているが、貿易交渉がまとまるかどうか、あるいはトランプ大統領が再選するかどうか、多少、米中対立の緊張感を高めたり和らげたりするかもしれないが、中国に対するアメリカをはじめとする先進諸国の警戒感がそう簡単に解消されるとは考えられず、2001年にWTO加盟の実現で始まったグローバル市場の進出、資金や技術の獲得などの快進撃が逆風を受けることは、避けられそうもない。
一方、国内に目を向けると、過剰生産設備や過剰債務などの問題が解決されるとは程遠い状況だ。より深刻なのは、改革開放以降、中国の経済成長の原動力だった民間経済の停滞が目立っていることだ。図表は、固定資産投資額の前年比の推移を示しているが、2012年以降、民間セクターの伸び率が大きく低下したことで、固定資産投資額全般も押し下げられていることが分かる。国有企業に比べて、景気の変調や政策変更により敏感なこともあるが、政治的な統制が強まるにつれ、長年続いてきた「政経分離」の環境が大きく変わり、国有企業が再び脚光を浴び始めるのが民営企業にとって経営環境の悪化にほかならない。
この問題について、習近平政権も十分意識し、政治局会議では、減税など民営企業の経営環境の改善を呼びかけている。しかし、民営企業にとっては、優遇政策は当然ありがたいが、権力闘争や政治キャンペーンに巻き込まれず、経営に専念することが一番な安心材料ではないかと考えられる。
したがって、経済規模の拡大に伴い、長期的には中国の経済成長率が低下していくのは、当然の趨勢だといえるが、雇用や消費など安定成長の基盤を固めるには、思い切った規制緩和など、外資を含む民間企業の活力をもう一度引き出すような環境整備は不可欠であろう。
以上